母と布団を並べて寝た。
横を見ると色白な母の顔がある。
母は20歳のころ結核にかかった。
強い薬のおかげで命は助かったものの副作用で両耳が不自由になった。
60代になると結核の後遺症が現れ喀血するようになった。
母の人生は苦労の連続だった。
父と結婚した後も両手をあかぎれにして朝から晩まで働いてきた。
寝たきりになった祖母。
老人性痴呆症になった祖父。
お酒で体を壊した父の看病、介護に追われてきた。
親不孝な息子に何度も涙を流してきた。
それでも気丈に生きてきた母。
笑顔がとてもきれいだった。
そんな母に昨春、再び病魔が襲いかかった。
小柄な体を蝕んでいく悪魔。
入退院を繰り返しながら頑張ってきた。
そっと触れた母のほほは癌と戦ったとは思えないほどしっとりしていた。
そして白い雪のように冷たかった。
もうゆっくり休んでいいんだよ。
顔を寄せて語りかけているのに母の寝息は聞こえない。
2月21日に母が天国へと旅立ちました。
83歳でした。
もし許されるなら、来世でもう一度、母の子供に産まれたい。
次こそは親孝行をいっぱいしてあげたいから。